この記事はこんな人におすすめ
- 卒論の考察の書き方がわかりません…例文を見てみたいです
- 結果と考察って同じじゃないの?えっ、違う?
- 卒業研究の考察について書いてあるサイトを読んでみたけどなんか難しくてわかんない
卒論の締めとなる、考察。
順調でしょうか?
いや、順調じゃないから、このページにたどり着いたのですよね。
初めて本格的な論文を書くあなたにとって、卒業論文の考察とは、わかるようでわからない得体のしれない存在です。
これまで大学の授業でレポートで考察を書く機会があっても、まともに教わった機会がない方もいるでしょう。
似たようなものに、結果、要約、まとめ、要旨などがあって、何が違うのかもわからず混同してしまっている方もいると思います。
一応、卒論の考察について書かれているサイトはあるものの、若干難しいと感じて「なんだかよくわからないなぁ」と感じたことはりませんでしょうか?
本記事では、卒論の考察について、身近な例を挙げて説明することで、あなたに考察の構成、書き方、役割について理解していただきます。
考察の基本的な考え方は、理系でも文系であっても変わりません。
あなたが理系・文系どちらであってもこの記事に書いた内容は役に立つはずです。
卒論の考察はあなたの考えを展開するところ
そもそも考察とはなんなのでしょうか?
考察とは、「自分の考えを展開するところ(文章)」です。
「考えを展開する」と言っても、なんのことだかわかりにくいですね。
噛み砕いて説明しましょう。
まず、卒業研究を始めるときに、あなたは「目的」を設定しましたよね?
その目的を達成するために、あなたは実験や調査を行いました。
では、その目的に対して、どんな結論が導けそうでしょうか?
イメージできましたか?
イメージできたなら、それで考察が完成です。
お疲れ様でした。
とまぁ、どういうことかというと、この通り考察とは、「ある目的に対して、実験や調査を経て得られた結果から、どんな結論が導けそうか」という話の流れを書くものなのです。
つまり、ただ単に参考文献を列挙したり、得られた結果を並べるだけでは考察とは言えません。
とはいえ、そんなにむずかしく考える必要はありません。
考察なんて、みんな日常的にやっているのです。
考察は推理と似ている日常的な行為
考察というとなんだか難しく感じますが、「推理」みたいなものです。
「犯人は誰だろう…。Aさんが被害者と口論していた。Aさんには動機がある。だからAさんが犯人だ!」
というパターンを名探偵○ナンみたいな推理ものでよく見かけますが、考察ってこんな感じです。
- 目的:犯人を探す
- 調査結果:Aが被害者と口論していたことがわかった
- 結論:Aが犯人だ
厳密に言えば推理と考察は違うのですが、話をわかりやすくするためにここでは同じと考えてください。
目的を明らかにするために、結果(事実・データ)を用いて結論を導く行為が考察なのです。
考えてみれば、このように事実をベースになにか推理することなんて日常的にやっていますよね?
卒論の考察もそれと同じだと思えばいいのです。
結果が同じでも人が違えば考察は異なる場合がある
考察は、人によって異なることもあります。
さっきの例で言えば、
「犯人は誰だろう…。Aさんが被害者と口論していた。Aさんには動機がある。しかし証拠がない。Aさんが犯人と断定するには証拠を見つけなければいけない」
- 目的:犯人を探す
- 調査結果:Aが被害者と口論していたことがわかった
- 結論:証拠がないのでより詳しい調査が必要
という考察になってもいいわけですよね。
論理的に破綻してなければ、考察する側が変われば結論が変わるのは普通なのです。
しかし、ちゃんと目的に対して意義のある結論を導く必要はあります。
例えば、
「犯人は誰だろう…。Aさんが被害者と口論していた。Aさんには動機がある。こんなところに居られるか!俺は自分の部屋に帰らせてもらう!」
という考察になれば、「目的どこいった?」となりますからね。
結果・結論・考察の違い
ここまでの話でわかったとは思うのですが、結果や結論と考察は違います。
考察の中に、結果や結論が含まれていると考えてもいいかと思います。
比較してみましょう。
結果・結論・考察の違い
- 結果・・・得られた事実。誰がどうみても変わらない。
- 結論・・・結果をもとに導かれた回答。
- 考察・・・結果から結論を導き出す行為そのもの
料理で例えるなら、結果が食材、結論が完成品、考察が料理そのものです。
くどくなったかもしれませんが、これで考察が何者なのかちょっとわかってきたのではないでしょうか。
意見と事実を分けること
考察を考える時に大事なのは意見と事実を混同しないことです。
例えば、ある実験や調査を行なってAという結果が得られたら、それは事実です。
誰がどう見てもそれは変わりません。
しかし、「Aによって何が言えるのか?」は意見です。
これは人によって変わります。
この事実と意見をごっちゃにすると考察ができなくなるので注意してください。
あくまで事実をベースに、自分の意見(主張)を導くのが考察です。
考察は参考文献がないと薄くなる
「結果は出たけど考察することがない」「考察が2、3行で終わる」
それは参考文献をうまく利用できていないからかもしれません。
本来、参考文献は、考察で活躍してくれます。
得られた結果と、参考文献(先行研究)で言われていることを照らし合わせて考察することで、より信ぴょう性の高い結論を導くことができます。
自分で導き出した結果に、他人の意見も乗ることで主張に信憑性が出るのです。
「クラスのみんなも言ってるよ」というアレです。
逆に、参考文献を持ち出さないと手持ちの結果だけでやりくりしないといけないので考察(議論)が深まりません。
自分だけだとどうしても信憑性が薄くなります。
だから卒論には参考文献が必要なのです。
では、具体的に参考文献をどう使えばいいのでしょうか?
それは続いてお話しします。
考察では比較・適用・反論・整理・まとめを行う
さて、ここまでの話で、考察は「事実を基に考えを展開することだよ」というのがわかってきたとは思うのですが、
「展開って具体的にどういうことだってばよ」
という疑問が出てくると思うのでそれについて解説していきます。
参考文献をどうやって考察に取り入れるのかもここでわかってくるはずです。
考察は、以下の流れで行うのがおすすめです。
考察の流れ
- 比較
- 適用
- 反論
- 整理
- まとめ
「さっきの結果と結論の話は??」と思うかもしれませんが、さっきのは素材の話で、これは手順の話です。
さっきの料理の例で言えば、この部分がレシピ・調理方法になると思ってください。
考察の「比較」の書き方
比較とは、参考文献と得られた結果を比較することです。
- 一致している
例:〜という結果は先行研究の〇〇と一致している。したがって〜は確からしい。 - 部分的に一致している
例:〜という結果は、先行研究の〇〇と△△という点では一致しているが、××という点では異なっている。これは〜と考えられる。 - 矛盾している
例:〜という結果は、先行研究の〇〇とは矛盾する。この理由は〜
この3通りの結論が導けるはずなので、それぞれについて自分の考えを述べます。
一致していれば「よかったね」でいいのですが、一致していない部分があればその言い訳を考えなければいけません。
考察の「適用」の書き方
適用とは、参考文献の理論や考えを用いて、結果を深掘りして新しい知見を得ることです。
例えば、
- 結果1と、〇〇(先行研究)の〜という点から、〜〜と言える。
- 得られた結果1を、〇〇(先行研究)の△△を用いて解析すると、〜となったことから〜〜である。
結果と参考文献の内容を組み合わせて、新しい知見を導き出します。
反論の書き方
自分の考察の穴や矛盾点を、自分で先に取り上げて反論をしておきます。
自分で反論ができないと思えば、「今後の課題である」として逃げます。
例えば、
- 結果1は〇〇(先行研究)の〜とは矛盾する。しかしこれは〜からである。
- 本研究の知見は〇〇(先行研究)の〜とは一致してない。この点についてはより詳しい検討が必要である。
という感じです。
反論が思いつかないときは、自分の出した結論に対して、なぜなぜ分析(なぜを5回繰り返す)をしてみましょう。
考察の「整理」の書き方
研究の目的と知見を、いったん目的別(論点別)に整理します。
ひとつの研究テーマの目的は、細かくいくつかの小目的に分けられると思います。
例えば、「〇〇の起源を明らかにする」という目的一つとっても、「いつ発祥したか」「どこから発症したか」「どう伝播してきたか」などに分けられますよね。
それぞれの小目的ごとに、自分の主張を整理します。
「小目的=論点」と考えてもらえるとわかりやすいかもしれません。
例文としては、
という感じです。
小目的→結果→結論→課題
というサイクルを、小目的ごとに繰り返すイメージです。
考察の「まとめ」の書き方
最後にまとめをします。これまで考察で述べてきたことを要約します。
あなたの研究のテーマについて、どんな結果が得られてどんな結論が得られ、どんな課題が生じたかを書きます。
「整理と同じじゃん」
と思うかもしれませんが、整理は小目的(論点)ごとの考察の整理でしたが、これはあなたの論文全体としての考察の締めくくりです。
本筋に関係の薄いことはバッサリ削って、あなたの研究で大事な部分だけ残すのです。
例えば、
みたいな感じです。
これまでの考察の締めくくりとして、大事なことを簡潔にまとめる(総括する)ということですね。
身近なテーマによる考察の例
「やっぱりいまいち抽象的でイメージができません!」という方もいるのではないでしょうか。
そこで、具体的に考察の例を作ってみました。
特定の研究について書くと今度は難しくなりすぎるとおもったので、身近なテーマについて考察の例を考えました。
参考にしてみてください。
<目的(テーマ):クラスの山田が誰を好きか考察する>
■参考文献
- 先行研究1・・・噂では、山田はクラスのテニス部のある男子を好きであるとされている
- 先行研究2・・・テニス部の田中は山田に告白して振られている
■結果
- 研究結果1・・・山田と仲のいい佐藤にインタビューしてみたところ、山田はクラスのテニス部のある男子が好きだという。インタビューには嘘発見器を用いた。
- 研究結果2・・・調査の結果、クラスにはテニス部は田中、鈴木、小林しかいない。
- 研究結果3・・・行動調査の結果、山田が先の3名の中で会話をする時間が最も長いのは田中で60%の内訳。次に多いのは鈴木で39%の内訳。小林とは1%であった。
■考察
- 比較
得られた第1の結果は、山田はクラスのテニス部の誰かが好きだという点で、先行研究1と一致している。
第2の結果からクラスのテニス部には田中、鈴木、小林しかいないことが明らかになったので、山田が好きなのはこの3名のうちの誰かである。 - 適用
しかしながら、先行研究2によれば田中は山田に振られているから、山田が好きなのは鈴木か小林となる。
ここで、第3の結果をみると、山田は小林とはほぼ会話をすることがない。
したがって、山田が好きなのは残る鈴木である可能性が高いと主張できる。 - 反論
しかしながら、ただ会話がないからと言って、山田が小林を好きではないとは言い切れない。
そこで、山田が小林を好きではないかどうかについての検討が課題である。
なお、インタビューされた佐藤の証言に信ぴょう性がないのではないかという点については、インタビュー時に嘘発見器を用いていることからその可能性は低い。 - 整理
本研究の目的は、山田が好いている男子を明らかにすることであった。結果として、山田が好きな男子はテニス部であり、クラスのテニス部は田中、鈴木、小林であることから、この3名のうち誰かであることがわかった。中でも、3名の中では田中、鈴木と会話する時間が集中しており、田中が以前振られている点を考慮すると、山田が好きなのは鈴木である可能性が高い。しかし、山田が小林が好きではないという可能性を完全に否定するには至らず、今後はこの点についてのより詳しい検討が課題である。 - まとめ
以上の考察から、本研究の知見として、山田は鈴木が好きである可能性が高いという知見が得られた。しかし、田中、小林が好きである可能性が否定できないという問題点が明らかとなった。今後は、田中、小林が山田の恋愛対象ではないことを裏付ける調査が必要である。
という感じでしょうか。
あまりテーマが卒論っぽくないのですが、不明なものを調査して明らかにするという点では、本質的には一緒だと思うので参考にしてみてください。
まとめ|卒論の考察は各要素を順番通りに作れば完成する
今回は、卒論の考察の書き方について解説させていただきました。
- 卒論における考察とは、ある目的に対して、実験や調査を経て得られた結果から、どんな結論が導けそうかという話の流れのこと
- 考察は目的・結果・結論をそれぞれ区別して、事実と意見を混同しないように書こう
- 考察では参考文献と結果を用いて、比較・適用・整理・まとめという順序で書くと書きやすい
考察はあなたの卒論のキモとなる部分であり、自分の主観的な意見が書けるほぼ唯一の箇所です。
大学生としての卒業研究の締めくくりとなります。
また、ある程度の自由度で自分の考えを積み重ねていけるので、文字数が稼げる場所でもあります。
慣れていないと書くのがやや大変に感じるかもしれませんが、この記事を参考にすれば、卒論やレポートの考察なんて怖くなくなります。
ぜひ、いい感じの考察を書いてばっちり卒論を締めてください。