この記事はこんな人におすすめ
- 要旨って…なんだ?書き方を知りたい。なんだったらある程度コピペでなんとかしたい。
- 要旨は要約だって教員に指導されたけど、よくわからないから例とかテンプレートを見たい。
- はじめに(序論)と要旨の違いがよくわからんのですけど…
要旨は意外と書くのが難しいです。
2万字を超える論文を、200字から400字程度に圧縮するわけですから、「何がこの論文で重要か」というのがわかっていないといけません。
しかも、大学生だと要旨の書き方をそもそも教わっていません。
さらに、論文の内容を論理の破綻なくわかりやすく伝えるための文章構成力も必要ですが、そういう指導も大学の教員からちゃんとされていない場合がほとんどです。
ですから、あなたが要旨を書けないのは仕方ないといえば仕方ありません…
しかし、どうあれ書かなきゃ大学を卒業できませんから、要旨の書き方をここで教えます。
要旨は「短いから書くのが楽」というのはとんでもない間違いで、逆に「短いからこそ大変」なのが要旨なんです。
そんな要旨の書き方と例文、テンプレートついて、ここで解説していきます。
目次
要旨(Abstract)は「まとめ」で序論(Introduction)は「導入」
要旨と序論の違いは、いったいなんなのでしょう?
たまに混同している大学生がいるので念のため解説しておきます。
簡単に説明すると、
- 要旨・・・まとめ。論文の背景、方法や結論が端的にまとまっているもの
- 序論・・・導入。研究の意義、問い、問題への切り口や研究の目的を、読者に伝えるもの
要旨は卒論の全貌を圧縮して読者に把握してもらうためのまとめで、序論は卒論の中身に興味を持ってもらうための前振りです。
ですから、要旨には結論や考察が必要ですが、序論では入れなくてかまいません。目的が違うので書き方も当然変わってきます。
要旨は卒業研究の内容や結果がわかるように書く
要旨は、「ここだけ読めば一通り書いてあることがわかる」というまとめです。
一般的に、研究者が学術論文を探すときに、本文を1から10までは読みません。
普通、要旨だけを流し読みして情報を拾っていきます。
無数に文献があるので、いちいち見ていられないのです。
ですから、要旨がうまくまとまっていない場合や、論文の魅力や有用性をアピールできていない場合、「よくわからん」「つまんなそう」「目新しいこと書いてないな」と思われてしまい、誰にもあなたの論文は本文まで読んでもらえません。
当然、引用もされません。
もし仮に、あなたが今後研究者を目指すのであれば、優れた要旨を書けるようになるのは必須の能力と言ってもいいです。
別に研究者を目指さないのであれば、とりあえず最低限、この記事を読めば卒論の研究内容が書けるようになるのでそれで乗り切りましょう。
ちなみに、要旨の分量は、一般的には全体の1〜2%です。だいたいA4用紙一枚ですね。この1〜2%で、ぎゅっと論文をまとめる必要があります。
要旨の書き方【構成テンプレート】はこちら
要旨を書くために必要なのは、文章センスではありません。
テンプレート(形式)に沿うことです。
要旨にはテンプレート(形式)があるので、その通りに文章を作っていけばある程度それっぽくなります。
書き方のルールがあるのです。小説とは違って、構成の部分から独創性を発揮しようとすると失敗します。
さて、そのテンプレートは、以下の9つの要素から成り立つものです。
テンプレート
- 問い
- 定義
- 先行研究でわかっているところ
- 先行研究でわかっていないor解決されていないところ
- 本研究の目的
- 研究手法
- 結果
- 考察
- 今後の課題
この要素を順々につなげていけば要旨が出来上がります。これは英語で書く場合でも一緒です。
テンプレートに沿った要旨の例
さきほどのテンプレートに沿って、要旨を書いてみましょう。
理系の場合の要旨例文:コーヒー豆の挽き方に関する研究について
まず、理系寄りの研究で要旨の例を書いてみましょう。テンプレートの各要素を書いてみると以下のようになります。(※ウソ研究です)
タイトル:コーヒー豆の挽き方が味覚に与える影響の検討
- 問い
コーヒー豆の挽き方と味にはどのような関係があるのだろうか。 - 定義
ここで言うコーヒー豆の挽き方とは、ミルでコーヒー豆を粉砕した際の粒の粗さの違い(粒度)のことを言う。 - 先行研究でわかっているところ
先行研究では、コーヒー豆の粒度が細かいほど、苦味成分が多く抽出されることが明らかになっている。 - 先行研究でわかっていないor解決されていないところ
しかし、実際にテイストテストによって、味の変化を体感的に評価した例はない。 - 本研究の目的
そこで、本研究はコーヒー豆の粒度の違いが体感的に味覚に与える影響を明らかにするために、 - 研究手法
ボランティアを対象としてテイストテストを行った。 - 結果
その結果、コーヒー豆の粒度を変更しても味覚では差を感じにくく、粒度を最小から最大まで変化させても3段階程度でしか差を感じられないことがわかった。 - 考察
コーヒー豆を挽き売りする場合は、3段階の粒度の商品設定をすれば十分と考えられる。 - 今後の課題
今後はコーヒーの抽出温度についても加味した検討が望まれる。
各要素を書いてみるとこんな感じですね。これをつなげてみましょう。
そこで、本研究はコーヒー豆の粒度の違いが体感的に味覚に与える影響を明らかにするために、ボランティアを対象としてテイストテストを行った。その結果、コーヒー豆の粒度を変更しても味覚では差を感じにくく、粒度を最小から最大まで変化させても3段階程度でしか差を感じられないことがわかった。コーヒー豆を挽き売りする場合は、3段階の粒度の商品設定をすれば十分と考えられる。今後はコーヒーの抽出温度についても加味した検討が望まれる。
どうでしょう、それっぽくなりましたよね。
もうひとつ、文系寄りの例を出してみましょう。
文系の場合の要旨例文:兄弟喧嘩に関する研究
つづいて、もうちょっと文系っぽいテーマの研究の要旨の例を書いてみましょう。(これももちろんウソ研究です)
タイトル:兄弟喧嘩と性格形成の関係性について発達心理学の観点からの考察
- 問い
兄弟喧嘩の多寡と、児童の性格にはどのような関係があるのだろうか。 - 定義
本研究で検討する兄弟喧嘩とは、同一家庭内の兄弟、姉妹間での暴力、非暴力を問わない喧嘩とし、15歳までのものを対象とする。 - 先行研究でわかっているところ
長子、末子、中間子、一人っ子それぞれでの性格の傾向について研究された例はあるが、 - 先行研究でわかっていないor解決されていないところ
兄弟喧嘩が多い家庭と少ない家庭での児童の性格の違いについて詳しく研究された例はない。 - 本研究の目的
そこで本研究では、兄弟喧嘩が頻度と児童の性格の関係性を明らかにすることを試みた。 - 研究手法
複数の家庭において、アンケート調査により兄弟喧嘩の頻度を集計するとともに、その家庭の児童に性格テストを実施して性格の傾向を調査した。 - 結果
兄弟喧嘩が多い家庭は、少ない家庭に比べて、兄弟間の性格の差が大きい傾向が見られた。 - 考察
性格が離れているほど、ささいなことで諍いが生じやすく、喧嘩に発展しやすいと考えられる。 - 今後の課題
兄弟喧嘩の多寡に影響を与えるであろう他の要因として、性別や年齢差についてはより詳細な検討が望まれる。
ではこれも繋げてみましょう。
そこで本研究では、兄弟喧嘩の頻度と児童の性格の関係性を明らかにすることを試みた。複数の家庭において、アンケート調査により兄弟喧嘩の頻度を集計するとともに、その家庭の児童に性格テストを実施して性格の傾向を調査した。兄弟喧嘩が多い家庭は、少ない家庭に比べて、兄弟間の性格の差が大きい傾向が見られた。性格が離れているほど、ささいなことで諍いが生じやすく、喧嘩に発展しやすいと考えられる。兄弟喧嘩の多寡に影響を与えるであろう他の要因として、性別や年齢差についてはより詳細な検討が望まれる。
書いてあることはテーマが違えば異なりますが、書き方自体は一緒です。
とりあえずこの流れで書けば要旨らしい要旨になりますので、まずはテンプレートを使って書いてみましょう。
論文の要旨の参考例の探し方
ここであげた例だと自分の研究から遠くていまひとつ参考にしにくい、という方もいるかもしれません。
そんな方は、実際に他人の論文を見るのが参考になると思います。
図書館に行って学術雑誌(ジャーナル)を読んでみると、参考になるものが見つけられると思います。
この記事を見て参考になりそうな論文を探してみてください。
まとめ|要旨はテンプレートに沿って書けばある程度形になる
今回は、卒論の要旨の書き方について解説しました。
- 要旨は、それだけ見ても論文に何が書いてあるのかわかるように端的に書く
- 要旨は、問い・定義・先行研究でわかっているところ・先行研究でわかっていないor解決されていないところ・本研究の目的・研究手法・結果・考察・今後の課題という要素で成り立っている
- 要旨の書き方は、各要素ごとに文を書いてから繋げればOK
要旨を書くには、ちゃんと頭の中が整理されている必要があります。今回紹介したテンプレートは、卒論の内容を整理するために有効ですので、まずはテンプレートに沿って考えるところから始めてみましょう。