この記事はこんな人におすすめ
- 卒論を書き始まったけど、引用のやり方がわからない
- 参考文献の名称ってどこにどう書けば?
- Wikipediaとかネットって引用していいの?
卒論を書き始めると頭を悩ませるのが、「引用の方法や参考文献の書き方」です。
それまでレポートを書く際に、なんとなくで参考文献を書いていたあなたも、卒論は流石に規定の書式に則って書かないといけません。といっても、本格的な論文を初めてあなたにとっては「規定の書式ってなに?そもそもなんかルールとか決まってたの?」と思いますよね。
そこで今回は、正しい引用の仕方、参考文献の書き方について解説していきます。
なぜ引用をするのか
そもそもなぜ、引用をしないといけないのでしょうか。もしかしたらピンと来ていないかもしれませんので、一応解説します。
「引用なき卒論は単なる日記と一緒」
卒論に限らず、論文というのは、論理的にある結論を導き出すものです。「論理的に」というのがミソで、あなたが出した結論はしっかりとした根拠に支えられていないといけません。でなければ、誰にもその結論を信じてくれませんし、評価もしてくれません。
では、根拠というのはどうやって用意すればいいのでしょう?
自分で実験したり調査したりして、全ての根拠を用意するという手段もあるでしょう。しかし、その方法では、論文で用意するべき根拠を全て自分で実験なり調査なりで導き出す必要があるので、膨大な時間・労力がかかるので現実的ではありません。
では、どうすればいいのでしょうか?それは…他人から借りてきちゃえばいいのです。他人からあなたの論文の根拠として利用可能な考察・データ・手法などを借りてくれば、圧倒的にやることが少なくなりますよね?
これが、引用です。
引用は、これまでのすごい研究者たちの力を借りて(巨人の肩に乗って)、自分の卒論を補強するための有効な手段なのです。逆に、引用がないと、「ぼくがかんがえたさいきょうの卒論」的な、単なる根拠のないスカスカの卒論になってしまいます。独り言に近いので日記と一緒です。
「引用しましょう!」と言っても、その方法には一定のルールがあります。実は、このルールを守らないと、あなたはトラブルに巻き込まれる可能性があります。続いて、引用のルールについてお話ししましょう。
※先行研究を引用する意義やその方法について理解したい方は以下の記事を参考にしてください。
引用のルールを守らないとどうなる?
引用には、ルールがあります。他人の書籍や論文から内容を拝借するわけですから、このルールを守らないと、知らず知らずに著作権侵害をしてしまう可能性があるのです。
卒論を書くにあたって、必ずこの引用のルールを守ってください。これを守らずに、権利者から著作権侵害で訴訟されても、誰もあなたを守ってくれません。知らなかったでは済まされませんので、自分の身は自分で守りましょう。
他人の文章やデータを引用する場合は、次の条件を守らないといけません。
- 主従関係が明確であること(明確性)
- 引用部分が他とはっきりと区別されていること(明瞭区別性)
- 引用をする必要性があること(必要性)
- 出典元が明記されていること(出典)
- 改変しないこと
出典:著作権の引用とは?画像や文章を転載する際の5つの条件・ルールを解説 | 仮想通貨(ICO)・AIやスタートアップ/ベンチャー法務に強い弁護士|トップコート国際法律事務所|IT弁護士
※著作物に当たらないものは、引用のルールを検討する必要はありません。興味があればこちらの記事が参考になります。
こうして並べても「なんのこっちゃ?」と思う人もいるかもしれませんが、これからお話しする具体的な引用の方法に従ってくれれば基本的には大丈夫です。詳しく知りたければ、出典のURLから勉強してみてください。
一次資料と二次資料
引用をするにあたって、理解していないといけないのが、「一次資料」と「二次資料」という概念です。
簡単にいうと、
- 一次資料・・・元データ。
例)テーマになる本人が書いた作品。調書。統計資料。実験・調査が行われた研究の論文。 - 二次資料・・・元データを基にして書かれた研究・作品など
例)ある事件や人物について書かれた小説。他人の実験データを基に、考察を行なっている研究論文。
基本的には、引用をするなら、一次資料からです。なぜなら、二次資料は、著者の解釈が入っている可能性があって、客観性や正確性が疑われるからです。
例えば、あなたが「日本国内の非正規雇用労働者の実態」についての研究をしたい場合は、一次資料としては省庁や企業が調査・発表している統計資料や、当事者のインタビューなどです。非正規雇用労働者をテーマにした書かれた『ガラパゴス』などの小説や、非正規雇用労働をテーマにして書かれた研究や新聞社のネット記事などは二次資料です。
「一次資料をどうやって探せば??」
と疑問に感じるかもしませんね。その場合は、二次資料には大抵、その引用元として一次資料となりうる参考文献が明記されています。それを辿れば一次資料に行き着きます。
入手可能な限り、一次資料から引用して議論を展開するようにしましょう。二次資料を論文の根拠として引用していると、「そもそもその文献正しいの?」といういらぬツッコミを受けますから。
参考文献の書き方
参考文献として、文献の著者などを書くわけですが、これにも一定の書式があります。好き勝手書いてはいけません。
参考文献になり得るものとしては、以下があります。
- 論文(学術雑誌)
- 書籍
- WEBサイト(ネット)
- 新聞記事
- 史料
- 法律や判例
それぞれの場合について解説していきます。例で出す書籍名やら学会名はほぼ架空なものなのでご注意を。
論文(学術雑誌)からの引用
書籍と並んでメジャーな引用先になると思われる、論文から引用した場合の参考文献の書き方です。
著者名(発行年)「論文タイトル」, 『学会誌タイトル』 巻数(号数), pp. ページ数, 学会名.
※カンマやピリオドの直後は半角スペース。最後はピリオドを忘れずに。
例)
山本篤史(1989)「紅茶成分の化学構造と食品物性」,『日本紅茶工業学会誌』29(3), pp.266-267, 日本紅茶工業学会.
書籍からの引用
書籍から引用する場合は以下の通りです。辞書も同様。
著者名(発行年)『書籍タイトルー副題』(シリーズ名), 出版社.
※カンマやピリオドの直後は半角スペース。最後はピリオドを忘れずに。
例)
谷本隆(2010)『麻雀の科学ー不利な局面における鳴きについて』(谷本隆全集3) 賭博社.
WEBサイト(ネット)からの引用
WEBサイトから引用する場合、「まずそのサイトの情報は正しいのか?」ということを考えないといけません。
WEBサイトは良くも悪くも誰でも作れますし、中身の校閲をされません。ですから、間違った情報や偏った情報が載っているサイトはいくらでも存在します。ですから、基本的にWEBサイトからの引用は信用されません。
浅く広く情報を拾うには適していますが、参考文献としては適していないのです。
しかし、省庁のホームページで公開されている統計情報や、企業のホームページで公表されている調査結果などは情報が正しいと言えそうなので、そのようなものは引用してもいいでしょう。ただし、個人のホームページやブログ、Wikipediaは基本ダメだと思ってください。
では、参考文献の書き方は以下です。
著者名(発行年)「ページタイトル」, <URL> アクセス日アクセス.
※カンマやピリオドの直後は半角スペース。最後はピリオドを忘れずに。
例)
新宿区「新宿区の人口:新宿区」<https://www.city.shinjuku.lg.jp/kusei/index02_101.html> 2019年5月1日アクセス.
著者名や発行年が不明な場合は省略してかまいません。著者名はわかるものの発行年が不明な場合は、著者名(発行年不明)と書きます。
新聞記事の場合
新聞の記事を参考文献として書く場合は以下の通りです。
新聞名「記事名または欄名」年月日付朝刊か夕刊か, 版(面).
※カンマやピリオドの直後は半角スペース。最後はピリオドを忘れずに。
例)
朝毎新聞「社説」1999年1月2日付朝刊, 3(2).
史料からの引用
歴史関連の研究をする人は、昔の史料を引っ張り出して引用することになると思います。そんな史料を引用する場合は以下。
史料群名や発受信者名「史料件名」巻数, 分類番号, 所蔵機関.
例)
在米粟野公使発陸奥大臣宛公信機密第32号「条約改正に関する件(第一)」明治27年8月30日発.
外務省記録「日米通商航海条約改正一件」第1巻, 2.5.1.32, 外務省外交史料館.
史料の引用のガイドラインが外務省から出ているので参考にしてみてください。
法律や判例など
法律関連についてはここで説明しきれないので、このサイト『法律文献等の出典の表示方法(第二次改訂案)』を参考にするのがおすすめです。
文章の引用の仕方
続いて、本文中でどういう風に引用として文章を書けばいいのかの解説をしていきます。
引用と一言で言っても、文章をそのまま引用してくる方法と、要約して引用する方法があります。
文章をそのまま引用してくる方法が『直接引用』。参考文献に書いてあることを要約して引用する方法を『間接引用』と言います。
そのまま引用する直接引用の仕方
まずは、直接引用について解説します。例えば、以下のような文章が参考文献にあったとします。
3−6でも触れたが、アブストラクトとは、論文の内容を一段落くらいで手短に要約・紹介した「論文概要」のことだ。学会誌に載るような論文の場合、これは本文とは独立させて、タイトルのすぐ下に書いておく。さらにそのアブストラクトの下に、論文のキーワードを並べることもある。
出典:戸田山和久(2012),『新版 論文の教室 レポートから卒論まで』,NHK出版, 84.
ここに書いてある文章の全部・または一部をそのまま引用するのが直接引用です。例えば、以下の通りです。
戸田山によれば、「アブストラクトとは、論文の内容を一段落くらいで手短に要約・紹介した「論文概要」」だと言う(戸田山 2012, 84).
カッコでくくって区別がつくようにすればいいわけですね。
引用する文章が長くなった場合は、以下のように書くこともできます。ちなみにこれを『段落引用』と言います。
論文のアブストラクトについて、戸田山は以下の通りだとしている。
|
アブストラクトとは、論文の内容を一段落くらいで手短に要約・紹介した「論文概要」のことだ。学会誌に載るような論文の場合、これは本文とは独立させて、タイトルのすぐ下に書いておく。さらにそのアブストラクトの下に、論文のキーワードを並べることもある。(戸田山 2012, 84)
|
このように戸田山は、アブストラクトとは論文内容を要約したものであると説明している。
こんな感じです。改行・字下げで見た目に明らかに区別がつくようにしないといけません。
さて、この間接引用のルールをまとめると以下です。
- 引用箇所は一字一句変えない(誤字脱字があってもそのまま書く。気になる場合は、誤字脱字と思われる箇所の直後に(ママ)と入れる。原文そのままの意)
- 引用箇所が短い場合は、カッコ(「」)でくくる(短い場合)。長い場合は改行、字下げする(長い場合=段落引用)
要約して引用する間接引用の仕方
さて、さっきは文章をそのまま編集せずに引用しましたが、要約して引用する方法についても解説します。早速例を出します。
アブストラクトとは、いったい何であろうか。戸田山によれば、アブストラクトは論文を要約して、簡潔に紹介するためのものだとしている(戸田山 2012, 84)。
「誰々によれば〜だ」という文で書けば、引用であることが伝わるのでこれでOKです。
ただ、この間接引用はあまり推奨しません。なぜなら、文章能力や読解力が一定以上なければ、要約し損なってしまうからです。卒論として論文を初めて書くような学部生はやらない方が無難です。
引用と書いておきながら、著者の主張と違うことを書いたら、著者からしたら「おいおい、そんなこと言ってねぇよ!」というツッコミを受けますよね。要約するために頭も使っていらぬ疲労をしますから、直接引用を使った方がおすすめです。
引用したことの示し方
参考文献の書き方はすでに解説しましたが、本文中で引用を行なった際に「引用したよ!」ということ知らせるにはどのように書いたらいいのでしょうか?
記述方法は大きく2つに分けられます。注記を入れて別な場所で参考文献情報を書く場合(注記式参考文献目録方式)と、括弧でくくって参考文献情報を書く場合(参照リスト方式)です。どちらも、最後に参考文献の一覧を作ります。
文献を明示する方法には二種類あります. 1.注で出典を挙げ,さらに注で挙げたすべての出典を,論文の最後に一覧表として列挙する「注記式参考 文献目録方式」 2.出典を参照した文章の末尾で,括弧付きで著者,出版年,ページ数を書き,論文の最後でそれらの参照 したすべての出典を一覧表として列挙する.「参照リスト方式」6
出典:文献引用の作法
どちらのスタイルがいいかは、先輩の卒論を参考にしたり、指導教官に指示を仰ぐといいでしょう。
注記を入れて別な場所に書く場合(注記式参考文献目録方式)
数字を注記として入れて別な箇所の参考文献情報を書く方法は、『注記式参考文献目録方式』と言われます(別にこの言葉は覚えなくていいと思いますが…)。
注番号を振ったらそのページのフッターに文献情報を書きます。フッターとは、本文が書けるエリアよりもさらに下の部分です。Wordなら、「表示」からフッターエリアを表示させるように設定を変更すればフッターがいじれるようになります。
■注記式参考文献目録方式の例
↓フッター
1 戸田山(2012),『新版 論文の教室 レポートから卒論まで』,NHK出版, 84.
参考文献の記述の仕方は、前に説明した通り、以下ですね。
著者名(発行年)『書籍タイトルー副題』(シリーズ名), 出版社, ページ数.
このように、引用箇所の直後に、注番号を振り、ページフッターに区切り線を入れて文献情報を書きます。注番号を振るには、Wordで脚注機能を使うか、フォント機能の「上付き」を利用します。文献情報は、著者の姓・書籍名・出版社名ページ数を以下の通りに書けばOKです。
同じ文献なら、2回目以降は表記を省略して以下で十分です。
著者の姓, 『書籍名』, ページ数.
本文中に参考文献情報を入れる場合
カッコで文献情報をその場に書く参照リスト方式の場合は以下の通りです。
■注記式参考文献目録方式の例
戸田山によれば、「アブストラクトとは、論文の内容を一段落くらいで手短に要約・紹介した「論文概要」」(戸田山 2012, 84)だと言う.
というように、引用箇所の直後にカッコで以下の情報をくくります。
著者姓 発表年, ページ数
引用した文献の詳細情報は、最後に一覧で詳しく書きます。
一覧表の作り方
注記式参考文献目録方式にせよ、参照リスト方式にせよ、文献の一覧は必須です。
例えば、以下の通りに文献の一覧を書きます。本文中でページ数は明示しているのでページ数は、一覧に書かず文献情報のみ書く方が一般的です。ただ、A4用紙一枚で収まるような要旨を書く場合は、注記式参考文献目録方式でページ数と参考文献名をまとめて書くことが多いかもしれません。
・田中太郎(2000),「塩ラーメンと半ライスを食べた時の成人男性の精神的満足度の測定方法について」,『炭水化物学会誌』15, 炭水化物学会.
・山田一郎(2001)『夜食の科学』(山田全集2)肥満社.
・新宿区「新宿区の人口:新宿区」<https://www.city.shinjuku.lg.jp/kusei/index02_101.html> 2019年5月1日アクセス.
引用した順番に書かないといけませんので、注意してください。
注記式参考文献目録方式の場合は、以下の通り注番号を対応させて書く場合もあります。
[2] 山田一郎(2001)『夜食の科学』(山田全集2)肥満社.
[3] 新宿区「新宿区の人口:新宿区」<https://www.city.shinjuku.lg.jp/kusei/index02_101.html> 2019年5月1日アクセス.
このように、引用した文献に番号を振って並べるだけです。
数字の書式については、特に世界共通ルールがあるわけではないので、先輩の卒論などを参考にしてください。
ちなみに、Wordには、相互参照(クロスリファレンス)という機能があるので、それを使うと楽です。
図版(図・表・イラストなど)の引用の仕方
「図や表、イラストはどのように引用すれば?」と疑問を持つ方も多いのですが、ほぼ文章と一緒です。
ちなみに図や表、イラストなどの視覚的に説明を行うものを図版と言います。
図版の場合は、その下に「出典:〜」と入れれば十分です。以下のような感じになります。
文章の場合と同様に、のちほど一覧でも出典を示しましょう。
まとめ
今回は、引用の方法についてまとめました。引用は正しく行わないと、剽窃になってしまい、著作権侵害に問われかねません。正しくルールを守って引用をしましょう。
- 引用をするのは自説の根拠を補強するため
- 引用のルールを理解して正しく引用しないと著作権侵害しちゃうかも…
- 参考文献の明示の仕方は媒体によって異なる
- 引用の仕方は直接引用と間接引用があるけど直接引用の方が無難だよ
- 引用箇所への参考文献の明示の仕方には注記式参考文献目録方式と参照リスト方式がある
- 卒論の最後に引用した参考文献を一覧にしてね
ここで説明した引用の方法は、あくまで一例です。学校や研究室、学会によっては独自の引用の書き方があるかもしれませんので、基本的に指定された書式や先輩の卒論に倣うのが無難です。