この記事はこんな人におすすめ
- 卒論がほぼ引用だらけになっちゃった!
- 引用箇所がとても長くなってしまったけど、いいのかしら
- 卒論の参考文献って何冊あればいいんですか?3冊では少ないですか?
卒論に限らず、論文を書く上で、他人の文献を引用するのは必須の行為です。しかし、引用が多すぎるのは問題です。
もし、あなたの卒論が引用ばかりで、自分の考えもなにもない空っぽの論文になってしまっていれば、卒論に不可を食らって卒業できないかもしれません。卒論が不可になるなんて、けっこう周りで噂になるでしょうし、人生に与えるダメージも大きいので避けたいものです。
なぜ、あなたの卒論は引用ばかりなのでしょうか?まずはその原因をはっきりさせ、対策を取っていきましょう。ここでは、あなたの卒論が引用だらけになってしまう原因と対策を解説していきます。
不可になる引用の仕方
「引用の割合多いな…やばくね?」と、あなたも自分の書いている卒論を見て思っているかもしれませんね。
でも、本当にやばいのは、「引用が多い」ことそのものではないかもしれません。実は、引用が多いことより、引用の仕方がまずい方がよっぽど問題になります。まず、引用のルールについて確認しましょう。
卒論に限らず、著作物のルールとして、引用箇所は「引用であることを明示」しないといけません。
また、引用した文章は、一字一句変更してはいけません。参考文献に書いてあることを語尾や言い回しをちょっと変えて書いたり、参考文献を明示しなかったりすれば「剽窃(盗用、パクリ)」にあたります(「直接引用」の場合)。
※参考文献の内容を要約して使う「間接引用」の場合については、意味を変えず、参考文献を明示すれば自分の言葉で書いてOK
指導教官の本音としては「居残られても面倒」なので、卒論に不可を出すことは実際あまりないと思いますが、剽窃は立派な著作権侵害ですから卒論に不可を出されても一切文句言えません。
実際、訴訟されたとしてもおかしくありません。著作権侵害は親告罪なので、世に出にくい学部生の卒論で訴訟食らう可能性は低いですが…。いっぱしの研究者がやればクビですかね。
そのため、参考文献から引用を行う場合は、必ず引用のルールを守って、正しく引用することが必要です。
↓この記事中に参考文献の引用の仕方もまとめてあります。
卒論が引用だらけになった時の対策
さて、引用についてのルールを理解したところで、卒論が引用だらけになる原因と対策を考えましょう。
「卒論が引用だらけになってしまった。これでいいのか…」と途方にくれる学生さんは多いものです。特に文系の方は。
なぜ卒論が引用だらけになってしまうのでしょうか?
それは一言で言えば、「自分の考えが整理されていない」ということにつきます。これを分解して考えると、以下の通りです。
- 問題提起が明確でない
- 結論が設定されていない
- 議論が練られていない
それぞれについて見ていきましょう。
引用だらけな理由1「問題提起が明確でない」
「問題提起が明確?なんのこっちゃ?」と思いますか。
そんなあなたは卒論の出発点はなんなのか思い出してみましょう。
卒論に限らず、論文の出発点は「問い」です。なにか解決しないといけないこと、未だ分かっていないこと、深く考えたいことなどが最初に設定されていないといけません。これが問題提起です。
引用をするのは、その問題を提起するに至った根拠を補強するためです。
例えば、「日本では高すぎる税負担が少子高齢化を招いている。どうすれば出生率を高められるか?」という卒論の問いを立てたとします。
すると、ここで説明しないといけないことがたくさん出てきます。
- 税負担とはそもそも何を指すのか?
- 少子高齢化とは?
- 税負担はそもそも高すぎるのか?
- 税負担と少子高齢化の関係があるのか?
- 少子高齢化になるとなにか困るのか?
- 本当に税負担が少子高齢化の原因なのか?
- 日本国外での事例は?
- 税負担を減らせば出生率が上がるという根拠があるのか?
- 他の人も類似の研究をしていないか?
などなど…
問題提起ひとつとっても、たくさん根拠を示したり説明したりしないといけません。そこで参考文献から引用してくるわけですね。
「なぜその問題を提起するに至ったか」「その問題は何が問題か」「その問題にはどんな背景があるのか」等ということを説明するために参考文献を引用します。まず、問題提起ありきでその説明のためとして引用があります。
「なぜその問いを立てるに至ったのか?」「なぜそれを研究しないといけないのか?」というストーリーを、いったんノートに箇条書きでもいいので書き出してみましょう。
自分の頭の中で、問題提起までの道筋がはっきりしていれば適切な箇所に適切なだけ引用をすることができますから、引用だらけにならないはずです。
引用だらけになる人は、この逆をやっています。なんとなくぼんやりした問いを立て、「あぁなんとなくこの文献のこの部分使えそうだな」と思ってつぎはぎしていってしまいます。結果、何を書きたいのかよくわからなくなります。
そうならないように、問題提起(問い)をはっきりさせるのがまず最初の一歩です。
引用だらけな理由2「結論が設定されていない」
卒論に限らず、論文は結論ありきで書きます。結論がないまま論文を書き始めることはあり得ません。
論文は、問題提起から結論に至るまでのストーリーです。ですから、目的地がはっきりしないで出発しても遭難するだけです。
例として正しいのかわかりませんが…新幹線の切符を買う緑の窓口で「どこまで行かれますか?」と聞かれて、「さぁ?決めてないんで」という受け答えしたらただのヤバイやつですよね。
でも、こんなヤバイ状態の論文はけっこうあります。「自分が何を結論として言いたいのか?」は卒論を書き始める前にはっきりさせていないといけません。
例えば、さきほどのように「日本では高すぎる税負担が少子高齢化を招いている。どうすれば出生率を高められるか?」という問題提起をしたら、「相続税を全体的に10%下げる」という結論を決めたとします。
そういう結論を設定して初めて、
- どのような論理展開でその考えに至ったか
- どんな根拠があるのか
- どれくらいその結論は確からしいのか
- 他の人の主張と比べてどうか
という話ができるようになります。
「問題提起→結論」に至る一連のストーリーが自分の中でちゃんと腹に落とし込まれていれば、自ずと自分の言葉で何を書けばいいかが分かってきます。結果、適切な箇所に適切な引用で済むようになるのです。
卒論は自分の考え(=結論)を主張するためのものです。引用をするのは、その考えを補強するためです。ですから、引用ばかりで卒論を構成してしまうのは、関係性が逆になってしまいます。一旦、自分の結論を明確にするために考えをまとめてみましょう。
引用だらけな理由3「議論が練られていない」とは?
卒論をはじめとする論文は、出発点が問題提起で、ゴールが結論です。問題提起から結論に至るまでは、他の人が読んでも納得するように考えの道筋を示さなければなりません。
その考えの道筋のことを、「議論」と言います。客観的・論理的に、問題提起から結論に導く過程のことです。ぶっちゃけ言い訳みたいなものです。
あなたはなぜ、その結論に至ったのでしょうか?
その理由と、その結論に至る考えの道筋を、一旦整理してみてください。紙に箇条書きしてもいいですし、ロジックツリーやマインドマップを使って考えを整理してもいいです。
↓考えを整理するテクニックについてはこちらにまとめてあります
とにかく、一旦自分の考えを整理しない限りは、下手に卒論を書き始めない方がいいです。迷走します。もちろん、もともとの自分の知識だけでは卒論は書けませんから、自分で参考文献を見たり、実験・調査してみたりして必要な情報を揃えていく必要があります。
そうして集めた情報を整理して繋げるのが議論です。ここでどれだけもっともらしく、独自性のある議論ができるかがあなたの卒論の価値となります。(結論言うだけだったら誰でもできますからね)
議論の道筋がしっかり描ければ、自分の言葉で卒論を書くことができるので、自ずと引用が減ります。
引用だらけになってしまっていることに気づいた時は、この議論の道筋を見失っている可能性が大です(もしくはそもそも道筋なんてないか…)。考えを整理する時間はしっかりと取るようにしてください。
参考文献の数が多い?少ない?
「参考文献の数ってどれくらいあればいいんですか?3冊では少ないですか?」という類の質問がよくありますが、ぶっちゃけ何冊でもいいのです。あなたの卒論が説得力のある論文になりさえすれば。
参考文献から引用するのは、自分の考えを補強するためです。適切な形で、適切な分だけ引用されていれば十分です。ですから、一般的に何冊が多いとか少ないとかの議論はできません。あなたの書く内容次第です。
参考文献をつぎはぎして卒論を書こうとするからこういう質問が出ちゃうわけですね。そうではなく、卒論の問題提起・結論・議論を補強するために、適切な文献を必要な分だけ引用するのが正しい引用の仕方です。
もちろん、関連する文献はできる限り読み込んだ方が、あなたの卒論のテーマについて理解が深まりますから、引用するかは置いておいて、文献はできる限り目を通すべきでしょう。
まとめ
今回は、「卒論の引用が多くなりすぎる問題」について原因と対策をお伝えしました。
- 卒論が引用ばかりになるのは、自分の考えが整理されていないから
- 問題提起・結論・議論の道筋が明確になれば自分の言葉で卒論が書ける
- 参考文献の数が多いとか少ないとかの質問はそもそも本質的でも建設的でもない
少し抽象的な内容になってしまいましたので、わかりにくいかもしれません。しかし、卒論は、自分で情報収拾して、考えを整理して、自分の言葉で書くものです。こればっかしは自分で理解・行動してもらう必要があります。
大変でしょうががんばりましょう!