この記事はこんな人におすすめ
- 「この卒論は倫理的配慮はされてるの?同意は取ってる?」と言われたが…倫理的配慮ってなに?おいしいの?
- 卒業論文やスライドへの倫理的配慮や利益相反の書き方がわからなくて例文を探している
- 研究において、被験者には倫理的配慮ってどう説明したらいいわけ?
倫理的配慮ってなんだかよくわかりませんよね?「倫理的配慮の倫理とは…?(哲学)」と思って途方にくれている方も多いのではないでしょうか。
今回は、そんな倫理的配慮についての説明をするとともに、書き方や例文のご紹介をします。
目次
倫理的配慮とは
研究分野によっては、倫理的配慮が非常に重要視されます。特に、医学・薬学・心理学などの臨床研究を行う研究分野は非常にうるさいですね。
もちろん、臨床研究を行う以外の研究でも、倫理的配慮は必要です。
さて、その倫理的配慮とは一体なんなのでしょうか?
倫理的配慮という言葉の通り、何かに配慮するわけですが、配慮するべき対象はいろいろあります。それを分解して解説します。
社会正義
道徳的に問題のある研究をしてはいけません。
例えば、「確実に銀行強盗に成功する方法」「気になる女性を洗脳する方法」なんて研究はダメですよね。悪の組織じゃないんだから。
また、研究の過程で誰かに著しい不利益をもたらすような研究もダメです。例えば「幼児に他人とのコミュニケーションを1年間遮断させるとどうなるか」など。猛パッシングですわ。
研究とは、基本的に研究は人類の幸福と平和のために行われるべきものです。
道徳的に問題がないかという「社会正義」の観点から倫理的配慮を守るようにしましょう。
同意取得(インフォームド・コンセント)
調査対象・被験者にはちゃんと同意(インフォームド・コンセント)を取りましょう。
対象となる個人・組織に対して、口頭と文書で、研究内容や目的をちゃんと説明します。
たとえ友人であったとしても、研究に協力してもらう前に、きちんと説明を行ってください。
「えぇー!そんな風に利用するなんて聞いてない!調査結果の利用は許可しません」なんて言われたら、おしまいです。
そんなことにならないよう、具体的には以下の項目を説明しておきましょう。
- 研究の内容
- 研究の目的(事前に明かせない場合はその旨を説明)
- プライバシーに配慮すること
- 協力しない自由があること
- 研究の途中でも辞退できること
- 研究結果の開示や、自分のデータの削除の請求ができること
双方のために、しっかりとインフォームド・コンセントを取りましょう。
プライバシーの保護
いくらすばらしい研究でも、人権侵害していたらいかんので、研究によって第三者に個人情報がわたらないようにします。
事例を出すと「これあの人じゃね?」とあたりをつけられそうな場合は、事例に多少の修正をしてください。なお、修正したことは論文にちゃんと書きます。
論文の書き方の問題だけでなく、個人情報やデータの管理も大切です。紛失・漏洩の危険がないようにちゃんと管理・処分してください。
もちろん、インフォームド・コンセントが取れなかったデータは使ってはいけません。
個人情報の配慮だけでなく、協力者の心情にも配慮しましょう。
誰に話を聞かれるかもわからない学食とかカフェなんかで「ご両親の不倫」みたいなセンシティブなテーマについてインタビューをするのは配慮が足らないと言わざるを得ません。
協力者が社会的・心情的にマイナスを被らないように配慮を行うことも、倫理的配慮に含まれます。
学術的信頼性
学問的な見地から、信頼に足る研究を行う必要があります。
要するに、パクったり嘘ついたりしたらだめですよ、ということです。
- 引用したら必ず出典を明らかにする
- データを改善しない
- 引用元の主張を恣意的に捻じ曲げない
- 他人のデータ、研究を剽窃しない
- 信頼できるところから引用する
- 実験、調査は十分に信頼できる手法にて行う
- ちゃんと読んだものを参考文献として使う
ということを心がけましょう。
利益相反
研究を発表する上で利益相反に気をつける必要があります。
利益相反とは、その研究によって利益不利益を被る営利団体と個人的利害関係があることを指します。
たとえば、
- 研究結果の影響を受ける会社から研究資金を受け取っている
- 研究結果の影響を受ける会社の社員・役員である
などです。
研究においてはこれ自体は別に悪いことではありません。
ただし、その研究を評価するには利益相反を加味する必要があるため、論文へ明記する必要があります。
倫理綱領
多くの場合、学問分野ごと、つまり学会ごとに倫理的配慮のポリシーをまとめた『倫理綱領』というものが定められています。また、大学や研究組織ごとにも定められています。
この記事で説明したものは共通しているでしょうが、分野特有の倫理的配慮がありますので、卒論を書く前に一度確認しておきましょう。
倫理審査委員会
卒論の場合はほぼ関係ないでしょうが、製薬(治験)など特定の学会では倫理審査委員会を通さないと学術誌に論文を寄稿できません。
倫理的配慮とはまた違うかもしれませんが、学会によっては大事な部分なので関係がありそうなら覚えておきましょう。
倫理的配慮の書き方と例文
では、倫理的配慮の項目は、卒論にどう書けばいいのでしょうか。
ポイントは、プライバシーの保護と、インフォームド・コンセントです。
あなたの研究によって不利益を被らないこと、個人が第三者に特定されないこと、きちんと協力者に研究の目的や内容を説明して無理強いせず同意をとったことが説明されていることが大事です。
例文を紹介します。
倫理的配慮の例文
- スタンダート
この調査において、個人名が第三者に特定されることがないこと、参加は自由意志であり拒否における不利益はないこと、ならびに本研究の目的と内容を参加者へ説明し口頭と書面にて同意を得た。本研究は〇〇大学倫理委員会での承認を得た。 - 不特定多数にアンケートを取った時など
調査票には本研究の目的と内容、プライバシーポリシーを明記した。調査票の回収をもって調査協力への同意を得たものとする。 - 対象者が未成年で十分な判断能力が認められない場合など
インタビュー対象者の家族に、口頭にて調査結果の利用方法やプライバシー保護に配慮する旨説明を行い、書面にて同意を取得した。
ポイントが抑えられていればいいので、そんなに長く書かなくて構いません。
プライバシー保護とインフォームド・コンセントの取得に問題がないことが伝わればOKです。
まとめ|倫理的配慮をしないと研究データが使えないかも!協力者へのインフォームドコンセントとプライバシー保護には注意
今回は、卒論の倫理的配慮に関して説明をしました。
- 倫理的配慮をしないとあとから研究やり直しの危険性あり
- 倫理的配慮については、社会正義、インフォームド・コンセント、プライバシーの保護、学術的信頼性、利益相反、倫理綱領の観点から考えましょう
- 倫理的配慮の書き方は主にプライバシー保護と、インフォームド・コンセントの取得がなされているように書く
卒論レベルなら倫理的配慮についてはうるさく言われないところの方が多いと思うのですが、一応学術的な研究ですから、この辺もしっかりと抑えておきましょう!